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仙台高等裁判所 昭和25年(う)871号 判決 1950年12月17日

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

判決要旨

満二十歳にならない者は仮令一応精神的肉体的の発達が成年者のそれに対比して劣らないように見えるとしても直ちに之を成年者と同列において量刑するのは失当である。

理由

検察官の控訴趣意は要するに被告人等は孰れも満二十年未満の者で最近において刑事上の処分を受けた者であるが、被害者山尾タケに対し恩義に報いるに残忍極まる謀殺による強盗殺人の所為で社会的影響も重大であるから、極刑を相当とすべきに拘らず、原審は被告人良夫を無期懲役同幸七を懲役十五年に処したのは不当である、というである。よつて記録を精査し犯罪の全貌につき検討するに被告人良夫は昭和二十四年一月二十一日仙台地方裁判所で恐喝未遂罪で懲役一年、三年間その刑の執行を猶予する旨の判決を受け、次いで昭和二十五年一月十四日平簡易裁判所で窃盗罪で懲役十月三年間その刑の執行を猶予する旨の判決を受けた者、被告人幸七は昭和二十四年一月二十一日仙台地方裁判所で恐喝未遂罪で懲役一年三年間その刑の執行を猶予する旨の判決を受けた者であること、被告人両名は共謀の上被害者山尾タケ方の家庭の、情況を熟知しながら、敢えて本件犯行に及んだこと、犯行は残忍極まる所為で然も謀殺による強盗殺人として敢行されたこと、被告人等の宿泊希望を善意に承諾して迎えた山尾タケに対して行われた犯行であること等を確認しえられるのであるから、斯る犯罪者に対しては極刑をもつて処断するの要があるとも思料せらるる。さればこそ被告人等も自殺を企てたのであろう。しかし一方被告人等の年齢をみるに被告人良夫は昭和五年八月十三日生れで本件犯行当時は満十九年五月であり、被告人幸七は昭和六年二月二十二日生れで満十八年十一月であつて孰れも満二十歳に達しないいわゆる未成年者であるから、仮令一応精神的、肉体的の発達が成年者のそれに対比して劣らないように見えるとしても、直ちに之を成年者と同列において量刑することは妥当でない。なお被告人等の性格、年齢、境遇、犯行後の情況及び社会的影響等を犯罪事実と総合し、仔細に検討して考慮するに、被告人等よりなお一縷の光明を見出しえないものでもないと思料せられる。よつて叙上の情状も斟酌総合する時原審が被告人良夫を無期懲役に被告人幸七を犯情酌量の上減軽して懲役十五年に処したのは洵に妥当であつて量刑不当ということは出来ない。結局論旨は理由がない。

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